Phantom

      何て声をかけるだろう?
      何を話そうとするだろう?
      恐らく 感情や思いを伝えようとはしないだろう
      現実世界で貴女に会う事がないという事を
      自分は虚しいくらい知ってしまっている

      現実世界で貴女の名を呼ぶ事は出来ても
      返事が返ってこないことくらい分かり切っている
      それでも
      若し会う事が出来たのなら 岐度話そうと努力をするだろう
      言葉なんか喉に張りついて出てきやしないだろうから

      今 貴女に対する自分の感情が解からない
      負の感情を抱いていない事は確かだけど・・・・・・

      ずっと貴女を追っていた
      けど 今はそれすらも分からない
      立ち止まって見つめ続けているのかもしれない
      名前を明かされずに訃報を聞いた時 貴女だと直感した自分
      認めたくはないけど
      無意識の中でその事を知っていたんだと思う
      ・・・・・・・自分の中ではよくある現象

      最後に交した言葉は何だったのか
      最後に会った場所は何処だったのか
      ――思い出せない

      図書館に行けば貴女に会えるような気がしていた
      尤も 何年かして貴女が居た場所に 自分も同じように居る事になるとは
      その時全く思いもしなかった

      同じ年数 その場所で貴女の幻影と重なっていたけど 自分は生きている
      生きようとしている訳ではなく 生きている
      貴女の幻影に生かされているのかもしれないけど
 
      若しかしたら
      貴女を見つめ続けているつもりで
      貴女からずっと目を反らし続けていたのかもしれない
      認めたくかったのか 認めたくないのか 認めるつもりすらもないのか
      今は 
      それすらも答えられない