偉大なる平等主義者の下で


       不思議だね
       さっき瞳を閉じたはずの君が 今僕の目の前で笑っているなんて
       取った手を冷たくて まるで あの夜の君の体温を思い起こさせる

       ふっくらとした月夜の晩
       ネイビーブルーの海に打ちつけられ さざれた月の欠片を集めたね
       もうあの海岸は無くなってしまったけど もう一度行ってみたいね
       月の雫を集め続ける君と それを眺める僕
       身体の温度差はあったけど 結ばれている感情はそんなことなかったよね

       残りようもない コンクリートの護岸に足跡を残し
       僕は歩く

       開かれた空に月はないけど
       僕の瞼裏には 月の光で浮かび上がった君の姿が
       しっかりと焼き付けられている
       今宵 海に浮かんでいるのは星屑の涙だけ

       信じられるかい?
       不幸だと思い続けていた この世界が この世の楽園だなんて
       不安で染まっているこの場所が 世界で最も安心できる所だって
       信じたくないから 君は瞳を閉じた?

       永遠に夢を見続ける為 君は僕の目の前から
       ・・・・・・姿を消した
       業火とも呼べるような炎の中 
       あつらえられたような月夜の空へと 君は舞う――
       今見ている夢に 僕はいるのかい?

       僕等の結末はこうなったけど
       悲しみ以上に 生まれて 巡り逢えて良かった
       そう 心の底から思っているんだ
       君に一言言いたかった

       有難う。大好きだよ――。