しきよし



          長きに渡り色褪せる
     終わりかけたその花の色は何色ですか?
     その花に手を添えて
     どうか想いを置き去りにしないで欲しい


     あなたの生き様を踏返ふみかえししない限り
     僕は残して逝く者にはなれない
     僕は残された人のまま
     けれど それは共に生きられなかったことにはならない


     想う人が しのぶ人が 残された人が
     あなたの存在を永遠とする
     決してあなたに本当の死が訪れる事はないんだ
     少なくとも僕が生きている限りはね


     往き着く先が分かっているから
     百代ももよも千代も振り返れば蜉蝣かげろうが如き時間
     風薫り花開く八千代の庭で 再び会うための別れだとしたら
     空白の時間にお土産話を沢山用意していこうか?


     深閑しんかんするこの世の中で
     徐々に浸蝕されていく僕の意識
     存在の常識の代償は何なのか
     簡単な筈のそんな答えすらも導き出せなくなってゆく


     忘れていっているんじゃあない 癒されているんだ
     風化しているわけじゃあない 同化しているんだ
     真実が事実に変わっただけ
     何故なら僕は生きているのだから