インプロヴィゼーション


     貴方にとって片手で行うことは "負け"を認める事? 
          失われた腕は戻らないのに
      ねぇ 楽譜を開いて
     貴方は今でもピアニストなのよ

     何が悪かったのかしら
     いえ 何も悪くなかったのよ
     生まれた時代も貴方の身に起きたことも
     利き手を失ったことすらも
     だって貴方は生きているのだもの

     指を動かして・・・・・・
     そうでなければ貴方はずっと負傷兵のまま 
     鍵盤に指を置いてみて
     上で跳ねる指が幾つであろうとも 音楽は音楽なのよ

     曲は短いかもしれない
     不満に思ったらしめたもの
     貴方が続きを書けば良いだけの話
     素敵なことだとは思わない?
     貴方によって救われる誰かがいるっていう事に

     培ってきたものは無駄にはならないわ
     だから 失ってしまったと嘆かないで
     貴方が紡ぐ音に魅せられている人(わたし)がいる限り
     ずっと ずっと待っている
     貴方がピアノに向かう日を