後 図
逃げればいい
この地に天が下というところがないのであれば
四面海か絶海か どちらも海には違いない
波間に漂う藻草 それは明日の我が身の姿か
狡兎死して走狗烹らる
――存在が意味を失くしてゆく
再び狡兎が現れたなら
先ずは何をすべきだろうか
運命だとしても受け入れられない
我が身の不幸はどこまで続く?
宿命だというのなら 受け入れよう
なれば 残さるるは清算のみ
一体何時 一体何処で 一体何故
狂わされた目的を知らぬまま
この先 どんなに 何かあっても
もう 二度と元に戻ることはないだろう
奔走した先に何がある?
追い詰めるつもりが追い詰められた・・・・
逃走した後に何が残った?
・・・・今 どんな景色が視界を占めているだろうか
地獄の業火の中で上げる産声
この身の内に渦巻く感情が
既に何であるかも判らない
その胸中を この思いを オマエハシラナイ・・・・・・
きまりをつけたかったのか
それとも自分が逃げたかったのか
この苦しみが罪からくるものなら
己が罪状はさぞかし黒いであろうな
償いは見合っていたのだろうか
もうその目はこちらを見てはくれない
もうその目は笑ってはくれない
けれど これで良かったのかもしれない――
--------------------------------------------------------------------------------
左寄り 足利尊氏視点
右寄り 足利直義視点