Kriseクリーゼ



          袖のしがらみは顔の傍 いつ手を放つ時がくるのだろう
          なず現実うつつ 僕に出来るのは緘黙かんもくする事だけ
          花片雪舞う中 朗々と響き渡った祈りの声
          もうそれは遠い昔のことのようだ


          幻滅感から幻滅して 手にした現実
          君だけが欠けているという空間
          しいたの者が何で君の手を取っていったのか
          何で、君でなければならなかったのか・・・・・・


          春霞のように視界を覆いつくした不香ふきょうの花
          その日僕には残された
          生きているという事によって 死を選択するという権利を
          それはたった一つ残された僕の自由――


          死して後む
          それだけしか残っていない?
          それだけしか残されていない?
          ししえにのせられる力は 僕の心を灰死させてはくれない


         柳を折ることも出来ないけれど
         麦秀ばくしゅうを目にしたわけじゃあない
         浮世の暇を空けるには、まだ・・・・・
         まだ早いのかもしれない


         しあわせに対して 盲目だった
         深悼しんとうすることもなかった
         だけれど 今は違う
         これは処方のある現実なのだから――