最低の極限

      かつて他人にやられた屈辱を
      今 私は愛してやまない人にしている

      不本意な手を使い 精神の自由を奪い
      モノを使って 肉体の自由を奪う
      最初の口づけの後
      私の下で 虚ろな瞳をしたあなたがいた

      情けないくらい涙を流し かすれた声で呟く
      一者の愛しき者の名を
      それはあなただったか 私だったか・・・・・・

      もう既に伴侶を持ち もう既に親であり とうの昔に一国の主たるあなた
      手に届く位置にいるのに 手に入らない
      それどころか あなたを望む事自体 赦されざる事
      想う事すらも罪科となる
      
      だから・・・・・・
      「力」を使って根こそぎ奪った
      肉体も時間も考え方さえも ・・・・・・たった、たった一時の間の為だけに
      だから、
      「全て」を見なかった事にした
      想いを表情を人格をも ・・・・・・・ただ、この一時の間の為だけに
      
      力ずくでしか、この人は手に入らない
      かすかに抵抗し そして私の手で昂まり壊れてゆく
      ・・・・・・私が欲し続けたもの?
      間違いに気が付いた時は もう遅かった

      それでも私は この人を欲さずにはいられない
      永遠に近い贖いが待っていようとも この人を愛さずにはいられない
      そして、それでも私は――