水波の隔て
その智謀 その知略 無人の野を行くが如し
ただ 救いとなれ
弓矢なる身の亡霊が群れ あまねく冥きところより怨嗟の声を上ぐ
望まぬ闇にさらわれ 汝光の中を孤独に歩む
妙ならざる覇滅の道を過ぎゆく 遙かな義の為に
死にゆく天を 毒に染まる地を 聖めし徳
破軍の星煌いて その切っ先で積悪の臣を絶ちぬべし
故に 我等命危ふき事を忘れたり
消えた灯 陽の射す場所を探して
陰はいずれ舞い 干城たる汝を蝕む
碧水の如く澄みし双眸が視る果て
伽藍堂に零れたる蒼き月の燈に何を感じたか
失意の望み かつて輩だった者と刃を交える
旗鼓の間に相見ゆ 配せし瞳に何を思う?
この心を生かしたまま 共に栄華をささやかしたかった
せめて今 この時だけでも波を鎮めて――この声よ、生き延びんことを・・・・
未だ兵馬倥偬の間にあって
涯分を量らんがために 礼儀を不存の者となる
その胸中不敵なれば 戦乱収まることを知らず
手にしたいのは妄執の未来か はたまた清雅の過去なのか――
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前半 護良親王⇒楠正成
後半 護良親王視点天下の争乱