Nirvanaニルヴァーナ



     百聞は一見に如かず
     かばね暗涙なみだ
     血が 逆流するような感覚を覚えた
     そして 今生の別れに耐えて 耐えて 耐え切って

     
     甦る記憶
     桜井で別れを告げられてから
     ずっと それこそずっと考え続けてきました
     ――時は一巡し 今度こたびは私の番


     重かったですよ あなたの子であるという肩書きが
     私は私なりに賭け抜いて来ましたが
     遂に時を味方にする事は出来なかった
     そんな私を あなたは叱責しますか?


     負けると判っていた 死も覚悟した
     しかし心が静かにたされていくのを感じる
     あの時のあなたの心境も こうだったのでしょうか
     目先を認めた今 おおとりの羽よりも命はかろくなってゆく


     修羅場でめる祈りは唯一つ
     圧倒的に不利な状況へと斬り込んで行く
     痛みよりも強くはげしく身体を覆っていく この感覚は一体何なのか
     最早のがれられないのなら せめて己が手で・・・・・・!


     どうやら私の務めはここまでのよう
     最期まであなたと同じと どうしてこの時知り得ただろうか
     ・・・・・・名は 守り通しました
     あとは 父上、あなたのもとへ逝くだけです



--------------------------------------------------------------------------------  四条畷の戦いに於いて 楠正行⇒楠正成