桜花飛英ペタルストーム

         ひきつれた古傷から湧き上がる痛み
          桜の頃は僕にとって慟哭どうこくの季節
     春風に誘われて
     地に伏した花びらが舞い上がる
     形を成していた花びらが枝を離れ 天へと舞う

     僕を包むように そして 僕はまとうように その中に溶ける
     溢れかえる幻惑の香りに酔いしれ
     その運命を儚く思う
     桜花の隙間から見えるのは 一体何なのか?
     冷たい現実? それとも自身が幻になるという真実?

     時と敵対するなんて 無駄なことだと思っている
     何もしなくても 記憶は歪んでいくと知っている
     いつまで経っても この約束が果たされない虚しさ
     それも・・・・・・
     それも解っている

     君が僕との約束を守れないように
     僕も君との約束は守れそうにないよ
     それでも君は
     「全てを忘れてリセットしてね。」と言うのかい?
     君に、初めて涙を教えてもらったというのに

     今年も目の前で桜が散る
     今でもそれは君の生を見るよう・・・・・・
     けれど また花開くように
     いつかどこかできっと君に逢える
     僕はそう信じている――