桑滄之変そうそうのへん



     然るべき天骨てんこちを備えずとも 天啓を受くる身は
     ――未来を切りひらけん
     月読つくよみ 言祝ことほぎ うたいて
     黄金造りの太刀を 海へと献じる


     底へ くらくらき 海の底へ
     聞き届けられよ この大願
     水の底 くらき厳かなる場にまします海若かいじゃくよ
     地上に浄化をもたらされよ


     北条が者共
     仮初かりそめの宿りに長居することなど総じてあたわず
     引くうしお ――身ぶるえ海神!!
     潮目が・・・・潮流ながれが・・・・目に見えて変わってゆく

     
     かつて平和であったであろう場を包む大火
     やがてそれは己が身を焼き尽くす業火を思わせる
     いや、今は何も考えまい
     善悪定まらずとも 我が名は残るだろう――大業おおぎょうを為した者として


     言葉を封じ、情を封じ、腐敗し切ったまつりごとの末を
     栄華を誇り続けてきた鎌倉このみやこを
     忿怒ふんぬほむらが浄化してゆく様を
     この身、この魂に刻み付ける


     三度目の正直
     再び蘇れ道の徳 より強まれ君が聖運しょううん
     天を仰ぎ これから始まる世界を甘く想う
     そう、これは始まりの終わりなのだ 



--------------------------------------------------------------------------------  新田義貞視点。鎌倉攻め。