守  拙
    成さねばならぬことがある     ・・・・・・それは     名を残すことでもなく 弓矢きゅうしほまれを受くことでもない そのかんばせ その双眸そうぼう 再び目にすることは叶わじ 水煙みけぶる瞳が煽る われが心 しんぞ誓わん この御方を虎口からのがれさせんことを 彼奴きゃっつ等に痴々しらじらし心地をさせんことを 命は義にりてかろのごされることのなかった血が染め上げた御衣おほんぞを 今 この身にまとう そして、そのいみなを犯す この場は見せ場である故に 如何にしてきたなびれた真似など出来ようか     貴種の戦いが散り様 まこと花の如し     そう言わしめれば 報われよう     もう、あの背は見えぬ     我が為に流された涙 手向けられた思い     それらを臨終の土産として いざ、往かん――


--------------------------------------------------------------------------------  村上義光→護良親王