瓜二つ



     真日長まけたかく経ったのだ
     かしこし――しましく古していたこの感情
     対面した顔は が先考を思い起こさせる
     忠実な・・・・至極忠実な夢追い人を


     中空に散った宿願を 総領がすがい 今に至る
     如何程おどろの道だったであろうか
     金輪際 際なき欲望をなだめすかし
     進まねばならぬ道を保ち続けた その、苦労


     魂離たまさかり 幾星霜重ねようとも 泡沫人うたかたびとの影にすがる虚しさ
     そこそこに気が付けばよいものを
     あかときが遠ざかるのは 何も時のせいだけではありますまい
     それとも それも貴方の思惑のうちか?


     互いに心は同じところに宿りしも
     一体何が悪かったのか・・・・・・帰趨きすうを得ることは叶わなかった
     天下てんげにおいて責を負わぬ業はなかれども
     いづれまで積み上げればをさむことがえやはなむや


     対峙していると心が惑う
     季節の変わり目の如く入り乱れる 思い、記憶、そして――情
     白らかにして 曇りなき縦様ただような夢負い人
     ――返す返すも 貴方には敵わぬな



--------------------------------------------------------------------------------  和平交渉に臨む楠正儀(まさのり)と佐々木導誉。  正儀を通して、その父・正成を思う導誉。