くびき


     
     目を射抜くような光
     本来なら生命を謳歌する季節ときなのに
     澄み渡った空の色に目を細める筈なのに
     泣きたくなってくるのはどうしてだろう


          こぼれ落ちる涙を拭うすべなどいらない
     硝子色の風の通り道と同じように
     葉上の雫と同じように
     気が付いてはほしくはなかった


     知らなければ 後悔することもなかった
     なればこそ 翻弄されることもなかった
     時を実在させることもなかった
     不醒の祈りを捧ぐこともなかった――!!


     遠退く意識の中 耳を掠めていくのは何なのか?
     これは 絶倫の領分
     お願いだから 言霊ことだまに強い力を持たせないで・・・・
     お願いだから ・・・・俺を試してくれるな!


     自己が崩壊する――
     感情が決壊する――
     今 ぎりぎりの領域にいる自分
     もう指先すらも動かせそうにないよ


     存在するけど存在し得ない感情
     溢れ出した想いは 挟間を埋めてゆく
     大雨が全てを洗い流してくれたら
     幾度そう思ったことか・・・・


     出来ることは全てした
     傍を離れること 突き放すこと 嫌われるように振舞うこと
     そして 想いを虐殺し尽くすこと
     けれども もう、戻れない


     戻れないと判っているのに
     全てをなかったことにしたいのに
     それでもやがては溢れ出るだろう この、想い
     それが今以上あなたを傷つけるものでないことを願ってやまない